1万3000年にわたる人類史の謎
著者 :ジャレド・ダイアモンド
訳 :倉骨彰
分類 :入門書?
総合評価 :★★★★
文章 :★★★★
内容 :★★★★★
人類史に関する本です.
あまり読まないタイプの本ですが知人に勧められたので読んでみました.
内容は,なぜ人類に国家間や地域間で貧富や技術の差が生まれたのか
という疑問を追求していくものになっています.
特に現代の日本人(もしかして)だとあまりしっくりしませんが,
当時だとこの疑問を人種差別的に考える人も多かったようで,
人種差別を批判する内容がところどころに出てきます.
また,ところどころ無理やり論理を通したような箇所も見受けられますが,
文系だとこういう文章だけで説得しなくてはいけないので大変そうだと感じました.
銃・病原菌・鉄の3つの要素が貧富や技術の差を決定したという論旨なのですが,特に病原菌に関しては記述が少なく,あまり納得できるものではなかったように感じました.
下巻でより詳しく書いてあるようなので下巻についても読んでみたいと思います.
以下,各章ごとの内容を要約しました.
プロローグ ニューギニア人ヤリの問いかけるもの
ヤリの素朴な疑問「あなたがた白人は,たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが,私達ニューギニアには自分たちのものといえるものがほとんどない.それはなぜだろうか?」
「現代世界の不均衡を生みだしたものはなにか?」
> 人種の優劣ではなく環境の違いにより現代世界の不均衡は生み出された
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第1部 勝者と敗者をめぐる謎
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第1章 13000年前のスタートライン
大まかな人類誕生からの歴史
第2章 平和の民と戦う民との分かれ道
ポリネシアにおけるマオリ族とモリオリ族を挙げて,
環境のちがいにより社会が分化した小さい例
第3章 スペイン人とインカ帝国の激突
スペイン人ピサロとインカ帝国皇帝アタワルパ(カハマルカの惨劇)
ピサロはなぜ勝利できたか
> 銃・病原菌・鉄の3つの要素
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第2部 食料生産にまつわる謎
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第4章 食料生産と征服戦争
征服戦争における重要な要素として
食料生産(余剰食料により,職業を分化させ,鉄・武器の製作に集中できること)
家畜化(馬などを移動手段・戦闘手段として利用できること)
病原菌(相手が免疫のない感染症)
の3つのがある.
第5章 持てるものと持たざるものの歴史
野生種を飼育栽培し,
食料生産を独自に始めた地域は一部
第6章 農耕を始めた人と始めなかった人
狩猟採集民から農耕民になった人は栽培飼育化に適した土地・環境の集団であった.
農耕民になった人々は狩猟採集民より体のサイズが小さく,栄養状態も良くなかった
第7章 毒のないアーモンドの作り方
野生種では毒のあるアーモンドを栽培化して毒のないアーモンドにした.
栽培化しやすい植物としにくい植物があり,
それらの野生種は土地により偏りがあった.
第8章 リンゴのせいか、インディアンのせいか
アメリカ先住民がりんごなどの植物を栽培化できなかったのはなぜか
アメリカ先住民がりんごを栽培化できなかった原因は栽培化・家畜化が可能な動植物の種類が限られていた.
第9章 なぜシマウマは家畜にならなかったのか
家畜化に失敗する原因は多くある.
シマウマの場合は歳をとるにつれ気性が荒くなることが原因
第10章 大地の広がる方向と住民の運命
東西方向への伝播は気候が近いことが多いため速く,
逆に南北方向への伝播は遅い
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第3部 銃・病原菌・鉄の謎
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第11章 家畜がくれた死の贈り物
感染症の多い地域では人間の集団の抵抗力を遺伝的に強化している
新しい感染症の多くは動物から感染し,特に家畜からの感染が主であった
ユーラシアでは集団感染症が家畜から感染したが,
南北アメリカでは家畜化可能な種が少なかったため,
感染症も少なかった.